【図解】中国「トレンド Express」 vol.4
本記事は、ホットリンク社が提供する中国「トレンドExpress」の第4号(2015年5月18日‐24日号)のレポート内容を抜粋したご紹介です。
端午節の連休がいよいよ迫ってきました。今週はJNTOから最新の外国人訪日数のデータも発表され、このデータによるとトレンドExpressでも先週予想した通り、訪日中国人数は40万人の大台を突破しました。ますます盛り上がる中国インバウンド、今週も本誌だからこそできる様々な確度から中国インバウンド動向を分析したいと思います。
今週発表されたJNTOのデータからみると、2015年4月の訪日中国人数本誌の予想通りついに40万人を突破、昨年比では213%の大幅な伸びとなりました。昨年2014年の訪日中国人社数が190,558人だったのに対して今年4月は405,800人、このペースでいくと昨年のピークだった7月の281,309人に対して今年の7月は50万人の大台を突破する可能性があります。先週は30万人で一人あたり25万円の消費として750億円市場と計算しましたが、このペースでいくと、50万人で一人あたり25万円、何と1,250億円の巨大市場になることになります。円安傾向は現在も続いているのでこの金額は更に上乗せされるであろうことも計算に入れると、とてつもない数字であることがわかります。
日本旅行に関する書き込みのうち、各都道府県について触れている書き込みの件数は、5月21日までの累積をみると、やはり先週同様に東京都が圧倒的で、他の都道府県を大きく引き離しています。2位以下は北海道(先週までは3位)、京都府(先週は4位)、大阪府(先週は2位)、神奈川県(5位)で、こちらも先週から大きな変化はみられませんでしたが、それ以下をみると、今週は沖縄県が急上昇し、鳥取県も新たにランクインしています。特に沖縄県は日本ではいち早く夏を迎える地域でもあり、訪日中国人の人気も拡大傾向にあることがわかります。
先週の書き込み件数と比較してみると、書き込み件数の増加幅が目立つのは、長崎県、宮城県、長野県となっています。いずれの件ももともとの露出件数が少ないこともあり、少しの増加で大きな成長率となりますが、逆に言うと今後訪日中国人が訪れるスポットとしてのポテンシャルが高いと言うこともできそうです。上位15都道府県のうち、100件以上の三桁の露出があるのは、宮城県、福岡県、熊本県ですが、先週同様に全般的に九州地方の成長が目立ちます。愛知県は名古屋市を含みますが、今週の露出件は55件にとどまっており、東京、大阪等の都市と比べると、訪日中国人からの注目度は低いことがわかります。
‐長崎県‐
書き込み上位は山東省、北京市、天津市等、華北エリアの都市からの書き込みが目立ちます。女性の割合が比較的高く約6割を占めており、25‐34歳、35‐35歳と比較的成熟した層の割合が高いことも特徴です。
‐宮城県‐
宮城県に関する書き込みは上位エリアからの書き込みの集中度が高く、男性の割合が高いという特徴がみられます、長崎県と比べると若い層からの書き込みも多いという異なる特徴もみられました。
‐長野県‐
長野県に関する書き込みは、北京市、広東省、上海市の3大都市と江蘇省、浙江省の華東地区中心エリアからと典型的な大都市からの書き込みパターンとなっています。女性の割合が大きいほか、35‐50歳、51歳以上のユーザーの割合も一定数みられるという、他の2県とは異なる傾向がみられました。
‐長崎県‐
長崎県に関する書き込みの中で特に目立ったのは「ハウステンボス」でした。ハウステンボスで遊んでいる写真をアップしているユーザーが多く、特に「チョコラ伯爵の館」が一番人気となっています。そのほかにも、異国情緒溢れる町並みや博物館、芸術館等全般的に建築物に対する書き込みが目立つのが長崎県の特徴です。意外なところでは、「長崎もちもちごまどうふ」。長崎県ならカステラかと思いきや、名前のとおりのもちもちの触感で訪日中国人の間では人気となっているようです。
‐宮城県‐
宮城県はやはり仙台市の人気が高く。多くのユーザーが仙台市を訪れたことをウェイボーに書き込んでいます。食べ物ではお米のほか牛タン、牡蠣について書き込むユーザーも多くみられました。その他頻繁に書き込まれていたのは猫島と呼ばれる田代島、多くのユーザーが行ってみたいと書き込んでいますが、実際に島を訪れた中国人はいないようです。
旅の途中で地震を心配する声もみられましたが、美しい自然、美味しい料理、全体として宮城県旅行に対する満足度は高いことが伺えます。
‐長野県‐
長野県に関する書き込みで目立ったのは、「善光寺」、「諏訪大社」、「松本城」等の歴史建築、「地獄谷」、「上高地」、「白樺湖」等の自然景観に関する内容。他のエリアに比べると、食べ物やお土産に関する書き込みは比較的少なく、観光スポットを訪れたことを書き込みユーザーが多いのも長野県の特徴です。長野県を訪れているウェイボーユーザーの旅行期をみてみると、実際旅行の過程で買い物の場面が非常に少なく、訪日中国人の中にも買い物が目当てではなく、日本の自然や景色を楽しむために旅行に来ている人々が増加しつつあることがわかります。自然や景色を楽しみたいと思う人にとっては長野県は最高の環境のようです。
■食べた
上位の顔ぶれはあまり変わりませんが、今週も先週同様「寿司」がトップ、以下「ラーメン」、「刺し身」、「お菓子」と続いています。本国で食べたことがある馴染みのある料理が強いのが特徴です。目立ったところでは、「焼き鳥」が先週の14位から8位にランクアップしています。中国の人はお肉の中でも特に鶏肉を好む人が多いので(実際中国ではマクドナルドよりもKFCのほうが人気があります)、焼き鳥も抵抗なく食べることができるようです。
■買った
買ったモノでは、ヒロインメイクシリーズが先週1位だった資生堂のANESSAを逆転してトップになりました。上昇傾向にあるのはスキンケア、フェイスパック、虫除け等の製品で夏に向けての女性の肌対策や子供のための虫除け製品の人気が高まりつつあることがわかります。
■行った
まだまだツアーで訪日する中国人が多いこともあり、ツアーの中に組み込まれているスポットが強いのが特徴です。噴火活動で観光客の減少が懸念されている箱根ですが、訪日中国人の間では目立った影響もなく依然として人気スポットとして多数の書き込みがみられました。
実際にはまだ購入していなくても、日本へ行ったら欲しいと思っている日本の製品がたくさんありますが、釣り竿、ヘッドホンの二強に続いて、今週は新たに「ホタテの力くん 海の野菜洗い」、「靴下」、「フィギア」がランクインしました。何回履いても伸びたり、たるんだりしない品質の良い靴下、アニメ人気のフィギアは理解できますが。第三位の「海の野菜洗い」は日本人は理解が難しいかもしれません。海の野菜洗いはホタテの貝殻の成分で野菜の表面の汚れを落とす一種の洗剤なのですが、中国の人は残留農薬を落とすために野菜を食器用洗剤等で洗い、かなり長い時間水につけておく習慣があり、この海の野菜洗いを使えば、食器用洗剤よりも効果的に農薬を洗い落とすことができるらしいという評判がソーシャルメディア上で広がり人気が拡大しているようです。
以下は「海の野菜洗い」が爆買いリストに踊り出るまでのヒット経緯を分析した結果です。
ほたての力君海の野菜洗いは、野菜や果物の表面の残留農薬を落とすことができるということで口コミが広まりました。また哺乳瓶の表面の雑菌も取り除くことができるという噂も広がり洗剤としてだけではなく、ベビー用品としてのも人気になっています。このホタテの力君ですが、ネット上の書き込みをみてみると、2014年は書き込みがそれほどみられませんでしたが、2015年特に3月に入って突然書き込みが1,000件を超え、以降件数が急激に拡大しています。
2015年1月の段階で、一部では人気が高まっていたようで、以下のような書き込みが発信されています。いくつかの取材によれば、2015年の2月ごろから商品の評判が高まる一方で供給不足という情報が出回り、結果として商品が希少化し、残留農薬除去に対する期待感が急激に上昇し、それが3月以降の書き込みの雪だるま式の増加につながっているようです。この点からみるとほたての力君は、上で紹介した情報波及パターンのⅰに近いものだと思われます。
【爆買いにおけるソーシャルバイヤーの役割】
今号では、爆買い商品の評判が広がる一つのルートとしてソーシャルバイヤーという存在を紹介しました。中国人に人気の日本製品の動向の変化の鍵を握る存在としてソーシャルバイヤーというのは非常に重要です。彼らが積極的に宣伝、販売している日本製品は当然ながら中国のソーシャルメディア上で情報が拡散されやすいので結果として多くのネットユーザーの目に留まることになります。その中から特に評判が高まって定番の爆買い商品となることもたびたびあります。
ソーシャルバイヤーは本気で商売をやっている人もいれば、個人の小遣い稼ぎでやっている人まで幅が広いですが、本気でやっているからといってそれが人気の商品になるとは限らず、小遣い稼ぎに友人に買ってきてもらった日本製品をネット上でアップしたところそれが評判になるということも頻繁にあります。
とはいえ、全てのソーシャルバイヤーが売れる日本製品の目利きができるわけではありませんから、通常はネット上で大人気の日本製品を多くのソーシャルバイヤーが自分の使えるルートを使って中国に持ち込み販売することになります。こうなるとネット上(特にソーシャルメディア上)は、「日本で大人気~譲ります」の書き込みであふれます。
こうしてネットに溢れる日本製品の情報はネットユーザーにも影響を与えて爆買い商品を作り出していくわけですが、ソーシャルバイヤーの中には他の人と同じものを売っていては儲からないということでまだ中国人にあまり知られていない日本の製品を他の人に先駆けて持ち込み販売する人がいます。こうした挑戦が成功すると、評判が高まりまた新しい爆買い商品の誕生につながっていきます。
つまり、現在の訪日中国人の爆買い現象の対象となっている商品というのは、中国のネット評判の総意が表出した現象ともいえるのです。ネットに溢れる情報、ソーシャルバイヤーの宣伝、ネット上の口コミが複雑に絡み合って特定の商品を人気の爆買い商品にかえていきます。その仕組みはさながら株式市場のようですが、そうした株式市場のような爆買い商品の評判形成の仕組みの中で、自分の仕入れた商品を売るために情報発信や宣伝をしかけるソーシャルバイヤーは、複雑な評判形成の仕組みを理解する上ではその動向がわかりやすい存在なのでとても重要であり、彼らの動きを今後も注目していく必要があると思います。
以上
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